Nemotron Transcribeは、NVIDIAが2026年10月28日に公開した、録音を文字にするオープンウェイトのAIです。日本語にも対応していますが、自分のPCで気軽に動かせるかどうかは、条件を分けて見る必要があります。
よくある疑問:Nemotron Transcribeは日本語の会議録音に使える?ノートPCでも動く?
材料は、2026年10月30日に確認したモデルカードとHugging Faceの公開情報、公式ブログ、技術メディアのgihyo.jpの記事、ライセンス本文です。編集部はNemotron Transcribeを動かしておらず、数値はすべて公表値です。
- Nemotron Transcribeは日本語に対応。品質区分は「Production-ready」
- 動作確認表のGeForceはRTX 5090だけ。ノートPCやMacは確認できていない
- 軽く試すだけなら、ホスト版か既存のWhisper系が現実的(筆者の整理)
- 話者ごとの書き分けや書式の指示が要る人は、試す価値がある
- 録音には他人の声が入る。ライセンスと参加者の同意は別に確認する
ライブ字幕が目的なら、Voxtral 3の解説のように、リアルタイム向けのモデルを持つ別のサービスが候補です。
Nemotron 3.5 Transcribeとは?NVIDIAが公開した文字起こしAIの要点
Nemotron Transcribeは、会議や取材の録音を文字にする音声認識に、話者の書き分けと翻訳を加えたモデルです。10月28日にHugging Faceなどで公開され、40言語に対応します。ライセンスはOpenMDW-1.1です。
オープンウェイト(=学習済みの中身が公開され、自分のPCやサーバーで動かせる形で配られるAI)なので、Hugging Faceから承認申請なしで重みを取得できます(10月30日確認)。
Nemotron Transcribeでできること
- 文字起こし:40言語。録音は最大1時間まで
- 話者の書き分け:日本語を含む13言語(公式ブログ)。最大8人(gihyo.jpの紹介)
- 翻訳:31言語。日本語と英語の双方向にも対応
- 書き方の指示:言いよどみの扱いや数字の書き方を、文章で指定できる(再学習は不要)
Nemotron Transcribeでできないこと
Nemotron Transcribeが扱えるのは録音したファイルだけで、ライブ(リアルタイム)の字幕には対応していません。
録音の内容への質問応答など、文字起こし以外の使い方は、評価が英語だけです。日本語では安定しない可能性がある、とgihyo.jpは指摘しています。
「30B」と「34B」、数字の見方
モデル名の「30B-A4B」は名称で、表記上の総数は音声エンコーダ込みの34B、動く部分は4.3Bです。MoE(=全部は動かさず、一部だけを使い分ける仕組み)でも重み全体を置く場所は要るため、容量は34B分で考えるのが安全です(筆者の整理・未検証)。
Nemotron Transcribeは日本語に対応している?精度の見方

Nemotron Transcribeの日本語は、対応言語に入っています。モデルカードの言語表では、日本語は音声認識・英語との翻訳・複数話者の文字起こし・コードスイッチング(=1つの録音の中で言語が切り替わること)がすべて対応です。
品質の区分は「Production-ready」です。最上位の「Leading」は、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・韓国語など13言語で、日本語は入っていません。区分はNVIDIAの基準で、日本語の精度が低いと決まったわけではありません。
公式に示された日本語の評価はどこまでか
日本語の文字誤り率(CER。低いほど良い)は、FLEURSという評価用データで4.42%、CoVoST2で10.61%とモデルカードにあります(2026年10月30日確認)。
どちらも既存の評価用データセットでの値で、会議室の反響や雑音入りの録音の精度を示すものではありません。

CERは「文字の間違い率」です。数字が小さいほど間違いが少ない、と覚えておけば十分です。
誤認識を減らす考え方
Nemotron Transcribeでは、録音に文章の指示を添えて、人名や専門用語の候補(モデルカードでは「Context terms」)を渡せます。会議に出る社名や製品名が決まっているなら、あらかじめ渡しておくのが一つの手です。
Nemotron Transcribeを動かすのに必要なPCは?重みサイズとGPUの目安
基準になっているのは、H100 80GBを1基使う構成です(モデルカードの「Deployment」欄)。H100はデータセンター向けのGPUで、個人が気軽に買う製品ではありません。
重みファイルのサイズ(BF16・FP8・NVFP4)
BF16が元の精度の重みで、FP8とNVFP4は、量子化(=数値を粗くして容量を小さくする方法)をした版です。サイズは上の図のとおりで、FP8とNVFP4は別のリポジトリで公開されています。
NVFP4は、英語ではBF16との差が小さい一方、英語以外ではFP8より精度が下がる傾向があります。日本語中心で使うなら、この点に注意が必要です(gihyo.jpが技術レポート4.12節を紹介)。
| 形式 | 重みの合計 | 動作確認表にある主なGPU | NVIDIAが示す向き |
|---|---|---|---|
| BF16 | 約67.5GB | H100・H200・A100 80GB・B200など | 基準の形式(H100 80GBを1基) |
| FP8 | 約34.67GB | H100・H200・L40S PCIe 48GB・B200など | 英語以外の精度を重視するとき |
| NVFP4 | 約21.56GB | RTX 5090・B200・DGX Sparkなど | メモリーや処理量が制約のとき |
GeForceで動作確認表にあるのはRTX 5090だけ
モデルカードの動作確認表は11行で、GeForceはRTX 5090(NVFP4)だけです。ほかは、H100・H200などのデータセンター向けと、DGX Spark、Jetson Thorです。
ノートPC、Mac、スマートフォンは表になく、動くかどうかは確認できていません(10月30日時点)。
公式ブログは、量子化版をRTX Spark、DGX Spark、Jetson AGX Thorで動かす想定と書いています。ただしRTX Sparkは、動作確認表には載っていません。
WindowsならWSL2かGGML
OSはLinuxとWindowsです。Linux用の実行環境は、WSL2(Windowsの中でLinuxを動かす仕組み)でWindowsでも動き、GGMLだけはWSL2なしのWindowsにも対応します。
公式ブログ(10月28日)は量子化版とNeMo-Speech.cppでのローカル実行を「近日公開」とし、gihyo.jpはGGUF形式も提供されると書いています。
10月30日時点のNVIDIA公式リポジトリ(本体・FP8・NVFP4)には、GGUFは見当たりません。第三者が公開したGGUFやMLXの変換版はHugging Faceに複数ありますが、NVIDIA公式ではなく、編集部も未確認です。
重みファイルのサイズと必要なVRAMは別物です。ファイルサイズは保存に要る容量、VRAMはGPUが処理中に使うメモリーで、実行時には作業領域も要ります。
筆者の整理として、重みだけで約21.56GBあるため、それより小さいVRAMのグラボでは、全部をGPUに載せる動かし方は難しいはずです(未検証)。



手持ちのGPUのVRAMはGPU性能早見表で確認できます。VRAMの見方は動画生成AIに必要なVRAMとPCスペックの記事でも説明しています。
公式が示す「100時間の音声を3分未満」は、高並列に処理した最適化環境の値で、普通のPCの速度ではありません。
同じシリーズの文章生成用モデルは、Nemotron 3.5 Bolt E4Bの解説で必要なPCを整理しています。
Whisperとの違いは?Nemotron Transcribeを選ぶ場面
Whisperは、OpenAIが公開している文字起こしモデルです。Nemotron Transcribeとの違いを、説明書とモデルカードの記載から表にします。
| 項目 | Nemotron 3.5 Transcribe | Whisper |
|---|---|---|
| ライセンス | OpenMDW-1.1(商用・非商用の利用可) | MIT |
| 大きさ | 総34B(動くのは4.3B)。重みは約21.56〜67.5GB | large 1550M(VRAM約10GB)、turbo 809M(約6GB) |
| 日本語 | 対応(Production-ready)。会議録音での精度は未確認 | 説明書に日本語の使用例あり。言語ごとの性能差が大きいと記載 |
| 話者の書き分け | 対応(13言語。日本語を含む) | 説明書に記載が見当たらない |
| 多言語の単語誤り率 | 7言語平均4.62% | large-v3は7.94% |
出典:Whisperの説明書、モデルカード、gihyo.jp(2026年10月30日確認)
Whisperなど比較相手の誤り率は2026年10月2日時点のランキング値で、7言語に日本語は含まれません。日本語でNemotron Transcribeが上回るかどうかは、この表からは分かりません。
Whisperが向く人
軽く試したい、手持ちのPCで動かしたい、という人はWhisper系が現実的です。turboでもVRAMは約6GB(説明書の値)で、Nemotron Transcribeの重みよりずっと小さいためです(筆者の整理)。
Nemotron Transcribeが向く人
Nemotron Transcribeは、話者ごとの書き分けや書式の指示、商用でも使えるオープンウェイトがほしい人に向きます。ただし、大きなGPUかホスト版を使う前提です(筆者の整理)。
録音を文字起こしする前に確認したいライセンスと同意


Nemotron Transcribeで文字起こしの結果が正しくても、録音の扱いを誤ると問題になります。先にライセンスと同意を確認しましょう。
OpenMDW-1.1の要点
- 無償で、モデルの素材を制限なく扱える(商用・非商用ともに可)
- 再配布するときは、ライセンス文と著作権表示を残す
- 出力物(文字起こしの結果)の利用や共有に、制限や義務はない
- モデルが特許や著作権を侵害していると主張する訴訟を起こすと、権利が終了(先に訴えられた場合の訴訟は除く)
- 「現状有姿」(そのままの状態)で提供され、無保証
他人の権利の処理や、必要な同意を得ることは、利用者自身の責任です。ここまでは編集部の読み取りで、法的な助言ではありません。迷う場合は、ライセンス全文(OpenMDW-1.1)と専門家の意見を確認してください。
録音データの扱い
ホスト版(公式ブログによるとBaseten、DeepInfra、Simplismart)を使うと、録音データは外部のサービスに送られます。自分のPCで動かす場合は、外に出さない選択肢が取れます。
会議・取材・診察などの録音には、第三者の声や個人情報が含まれます。参加者に事前に説明して同意を取り、保存先と共有範囲を決めておくのが安全です。
Nemotron Transcribeについてよくある質問
- Nemotron Transcribeは無料で使えますか?
-
重みは承認申請なしでHugging Faceから取得でき、ライセンス(OpenMDW-1.1)は無償で扱えると定めています。ただし、動かすGPUやサーバーの費用は別です(2026年10月30日時点)。
- Nemotron Transcribeはライブ字幕に使えますか?
-
使えません。録音したファイルを処理するモデルで、ライブには対応していません。ライブ向けには、Voxtral 3のようにリアルタイム用のモデルを持つ別のサービスを探す必要があります。
- Nemotron TranscribeはノートPCやMacで動きますか?
-
確認できていません。モデルカードの動作確認表に、ノートPCやMacの行はなく、GeForceはRTX 5090だけです(2026年10月30日時点)。第三者のMLX変換版は公開されていますが、編集部は未確認です。
- WhisperからNemotron Transcribeへ乗り換えるべきですか?
-
筆者の整理では、軽く文字起こしするだけなら、Whisper系のままで足ります。話者ごとの書き分けや書式の指示が必要で、大きなGPUかホスト版が使えるなら、Nemotron Transcribeを試す価値があります。
まとめ:Nemotron Transcribeは日本語対応だが、PCで気軽に動かす段階ではない
Nemotron Transcribeは日本語に対応するものの、10月30日時点では、一般的なPCで気軽に動かせる段階とは言えません。
- 日本語の精度は、評価用データの値と、会議録音での実力を分けて考える
- 動かす前に、動作確認表・重みの形式・OS(WSL2かGGML)を確かめる
- 結果の利用は自由でも、録音の同意は自分で取る
NVIDIA公式のGGUF形式や、NeMo-Speech.cppでのローカル実行が公開された段階で、この記事を更新します。
この記事の情報は2026年10月30日確認です。
更新履歴:2026年10月30日:公開
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