動画生成AIをローカルで動かすなら、最初に見るべきはグラフィックボードのVRAMです。ブラウザで使うサービスと違い、映像を作る計算を自分のPCが全部引き受けることになるからです。
ただ「結局は何GBあれば足りるのか」を調べ始めると、数字がきれいにそろいません。同じモデルなのに「24GB」と書かれた場所と「8GBに収まる」と書かれた場所があるからです。
そこでこの記事では、公式が実際に書いている数字だけを2026年9月7日に確認して並べました。数字が食い違う理由まで含めて、自分のPCで判断できるところまで案内します。
- 動画生成AIをローカルで動かせるかは、ほぼVRAMの容量で決まります
- 公式が明記した下限はFramePackが6GB、Wan2.2の5B版が24GB(2026年9月時点)
- ComfyUI公式は同じ5B版を「8GBに収まる」と記載。どちらも省メモリ前提の数字です
- NVIDIA公式が示した制作手順の要件は16GB。実用ラインの目安になります
- 商用利用の条件はモデルごとに違うので、使う前に公式の記載を必ず読みます
動画生成AIをローカルで動かすには?結論はVRAMの容量で決まる
動画生成AIをローカルで動かすとは、公開されているモデルのデータを自分のPCへ取り込み、映像を作る計算をそのPCの中だけで終わらせることです。
このとき作業台になるのがVRAM(グラフィックボードに載っているメモリ)です。作業台が狭いと、そもそもモデルを広げられません。
動画生成AIをローカルで動かす目安は、記載を並べるとおおよそ3段階に分かれます。6〜8GBが入口、16GBで実用、24GB以上で余裕という並びです。
ただし、この数字は「そのまま動く最低ライン」ではありません。どんな設定で動かすかによって、同じモデルでも必要な量が変わります。理由は次の章で詳しく見ていきます。
そもそもローカルとは?ブラウザで使うサービスとの違い
ローカル(自分のPCの中だけで動かすこと)の反対側にあるのが、ブラウザを開いて使うサービスです。あちらは計算を相手の設備が引き受けるので、PCの性能はほとんど関係ありません。
そのかわり、作れる本数や待ち行列は相手のルールに従います。動画生成AIをローカルへ持ってくると、この主導権が自分の側に移ります。
| 比べる点 | 動画生成AIをローカルで動かす | ブラウザで使うサービス |
|---|---|---|
| PCの性能 | VRAMの容量で可否が決まる | ほぼ関係ない |
| 作れる本数 | 電気代と時間が許す限り | 提供元の制限に従う |
| 素材の扱い | 自分のPCから外に出ない | 提供元へ送る形になる |
| 細かい調整 | 設定を自分で触れる | 用意された範囲まで |
| 始めるまで | 環境づくりの手間がかかる | 登録すればすぐ |
つまり、動画生成AIをローカルへ移すと自由と引き換えに初期費用と待ち時間を自分で負担することになります。試すだけならブラウザのサービスで十分、という判断も正直あります。
なぜVRAMが最優先なのか|PC本体のメモリとは別物
PCのカタログにある「メモリ16GB」は本体側のメモリで、VRAMとは別枠です。動画生成AIの計算はグラフィックボードの中で進むため、見るべきはVRAMの側になります。
そして映像は、静止画が何十枚も連なったものです。1枚の絵を作る画像生成AIより、扱うデータが一気に増えます。
同じ土俵で比べたい方は、画像生成AIに必要なPCスペックは?VRAMの目安を初心者向けに解説もあわせて読むと、重さの差が実感しやすくなります。

PCを買うときの「メモリ」欄と、グラフィックボードの「VRAM」欄。動画生成AIで見るのは後者です。
公式が示すVRAMの実数|動画生成AIをローカルで動かす3つのライン


ここからは、動画生成AIをローカルで動かすときによく名前が挙がる3つのモデルについて、公式が書いている数字をそのまま並べます。すべて2026年9月7日に確認したものです。
| モデル | 公式が示すVRAM | 解像度・コマ数 | ライセンス | 記載元 |
|---|---|---|---|---|
| Wan2.2 TI2V-5B | 24GB以上(例としてRTX 4090) | 720P・24fps | Apache 2.0 | Wan2.2公式リポジトリ |
| Wan2.2 TI2V-5B | 8GBに収まる | 同上 | Apache 2.0 | ComfyUI公式ドキュメント |
| Wan2.2 14B系 | 80GB以上 | 480P・720P | Apache 2.0 | Wan2.2公式リポジトリ |
| LTX-2 / LTX-2.5 | 記載なし | 公式コードの例は24fps | LTX-2.x Community License | ComfyUI公式・公式モデルカード |
| FramePack | 6GB | 1分・30fpsを想定 | Apache-2.0 | FramePack公式リポジトリ |
※出典:Wan2.2公式リポジトリ/ComfyUI公式ドキュメント(Wan2.2)/同(LTX-2)/LTX-2.5公式モデルカード/FramePack公式リポジトリ(いずれも2026年9月7日確認)。
よくある疑問:同じモデルなのに24GBと8GB、どっちを信じればいいの?
Wan2.2|24GBも8GBも「省メモリ込み」の数字
アリババが公開しているWan2.2は、動画生成AIのモデルをまとめて配布しているものです。公式リポジトリには、統合モデルのTI2V-5Bについて「少なくとも24GBのVRAMを積んだGPU(例:RTX 4090)で動く」と書かれています。
一方、ComfyUI公式ドキュメントは同じ5B版について「ComfyUIのオフロード機能を使えば8GBのVRAMにうまく収まる」と書いています。3倍の開きです。
ここが誤解されやすいところなのですが、Wan2.2公式の24GBという数字も、すでに省メモリ設定を入れた状態のものです。
案内されている実行例には、モデルの一部をGPUの外へ逃がす、データ形式を軽い型に変換する、文章を読み取る部分を本体側で処理する、という3つの節約策が最初から入っています。
そして同じページには「80GB以上のVRAMがあるなら、これらの設定を外して速度を上げてよい」とも書いています。つまり24GBは「節約しながら動かす前提の数字」で、8GBは「もっと踏み込んで節約した場合の数字」です。
オフロード(VRAMに収まらない分をPC本体のメモリへ逃がす仕組み)をどこまで使うかで、必要量は大きく動きます。動かす道具の側の作りが気になる方は、ComfyUIとは?無料で使える画像生成AIの始め方とPC要件を解説で全体像をつかめます。
なお、より大きい14B系のモデルには80GB以上という記載があります。個人のPCで狙う範囲ではありません。
LTX-2|公式はVRAMの下限を書いていない
動画生成AIの中でも珍しい方向性なのが、Lightricksが公開しているLTX-2です。ComfyUI公式ドキュメントによると190億パラメータの音声・映像の基盤モデルで、動きとセリフ、効果音、音楽を1回の処理でまとめて作る点が特徴とされています。
「パラメータ」はモデルの規模を表す数字で、大きいほど重いと考えて差し支えありません。後継のLTX-2.5の公式モデルカードでは、220億パラメータの配布物が並びます。
ただしこの系統は、公式のページにVRAMの下限が書かれていません。省メモリの工夫を紹介する項目はあるものの、「何GB必要」という基準値は示されていないのが2026年9月時点の状況です。
代わりに手がかりになるのが、NVIDIAが2026年3月17日に公開した映像制作の紹介記事です。LTX-2.3を使ってRTX搭載PCの中だけで完結させる手順を示し、必要環境として「16GBのVRAM(GeForce RTX 5070 Ti以上を推奨)」と明記しています。
これはあくまでその手順を動かすための要件で、動画生成AI全般の必要スペックではありません。とはいえ、名前が挙がった実用ラインとしては参考になります。
FramePack|公式が「6GB」と明記している入口
動画生成AIの入口として現実的なのがFramePackです。次のコマを順に予測しながら映像を伸ばしていく仕組みで、公式リポジトリには「130億のモデルで1分・30fps(1,800コマ)を作るのに最低6GBのGPUメモリ」と書かれています。
対応するのはRTX 30・40・50シリーズと明記されています。公式が6GBと言い切っている選択肢は貴重で、手持ちのPCで試す入口になります。



いきなり大きいモデルを狙わず、6GBで動く方から試すと失敗が少ないです。
VRAMが足りないとどうなる?動画生成AIをローカルで動かす時の待ち時間
動画生成AIをローカルで動かすとき、VRAMが足りないと即エラーになる、というわけでもありません。オフロードが働く構成なら「動くけれど遅い」という結果になり、限界を超えると途中で止まります。
動画生成AIをローカルで扱ううえで、この待ち時間はかなり大きな要素です。数字で見ておきましょう。
作るのにかかる時間の目安|公式の速度から計算すると
FramePack公式は、作者のRTX 4090搭載デスクトップで1コマあたり2.5秒(速度改善の仕組みを使うと1.5秒)という速度を示しています。
この数字をそのまま掛け算すると、1,800コマ(1分・30fps)で約45分〜75分になります。実測ではなく、公式が示した1コマあたりの速度から単純計算した目安です。
それも上位のグラフィックボードでの話です。ローカルは「お金の代わりに時間を払う」選び方だと考えると納得しやすくなります。
VRAM以外のパーツ|メインメモリ・ストレージ・CPUの見方
オフロードを使うなら、逃がした先であるPC本体のメモリにも余裕が必要です。VRAMだけ大きくても、本体側が窮屈だと詰まります。
ストレージも見ておきたい部分です。動画生成AIのモデルは本体だけで完結せず、文章を読み取る部分や画像を組み立てる部分など複数のファイルを組み合わせて使います。
書き出した映像そのものも積み上がるため、空き容量は多めに見ておくと安心です。
CPUは計算の主役ではありません。ただしモデルの読み込みや、本体側へ逃がした処理を受け持つので、極端に古い構成だと足を引っ張ることがあります。
なお、VRAMの消費を減らす加工そのものについては量子化とは?AIモデルが4bitで軽くなる仕組みを初心者向けに解説で詳しく扱っています。
動画生成AIをローカルで使うなら商用利用の条件も確認する
意外と見落とされがちなのがライセンスです。動画生成AIをローカルで動かせたとしても、作った映像を仕事や投稿に使えるかは別の話になります。
- Wan2.2:リポジトリはApache 2.0と記載。ComfyUI公式も「商用利用に対応する」と説明しています
- FramePack:リポジトリのライセンス表記はApache-2.0です
- LTX-2.x:独自の「LTX-2.x Community License Agreement」。年間収益1,000万ドル未満なら商用・本番利用を無償で認め、それ以上は有償契約が必要と書かれています
LTX-2.xの収益判定には補足があります。モデルカードには「収益は子会社や共通支配下の関連会社を含む法人全体で測る」としています。会社で使うなら、部署単位ではなく会社全体で考える必要があります。
ライセンスの条件は改定されます。仕事で使う前に、必ず公式のライセンス本文を自分の目で確認してください。
仕事や投稿に使う前に確認したい3点
- 使うモデル本体のライセンス(配布元のページに書かれている条文)
- 作った映像の扱いと責任は、原則として使う人の側にあること
- まとめサイトの日本語要約ではなく、配布元の原文を見ること
ここまでの条件はすべて2026年9月時点の記載です。最新の内容は各モデルの公式ページで確認してください。
これから買うなら|動画生成AIをローカルで動かすグラフィックボードの目安


買い替えを考えるなら、見るのは型番の見栄えではなくVRAMの容量です。NVIDIAのスペック表で確認できる現行世代の容量を並べます。
| グラフィックボード | VRAM容量 | 動画生成AIをローカルで動かすときの位置づけ |
|---|---|---|
| RTX 5090 | 32GB | 公式が挙げる24GBラインを上回る |
| RTX 5080 | 16GB | NVIDIA公式の手順が求める16GBに届く |
| RTX 5070 Ti | 16GB | 同上(公式が名前を挙げた推奨) |
| RTX 5070 | 12GB | 入口より上、実用ラインには一歩届かない |
| RTX 5060 Ti | 16GB / 8GB | 容量が2種類ある。要確認 |
| RTX 5060 | 8GB | 省メモリ前提の入口 |
※出典:NVIDIA公式のスペック比較/GeForce RTX 5060ファミリー公式ページ(いずれも2026年9月7日確認)。
いちばん引っかかりやすいのがRTX 5060 Tiです。同じ名前で16GB版と8GB版があり、型番だけでは見分けられません。
購入画面では必ず容量の表記まで見てください。この「型番ではなく容量で選ぶ」考え方はローカルLLMに必要なVRAMは何GB?モデル別の目安とGPUの選び方とも共通します。
\VRAM容量はスペック欄で確認/
自分のPCのVRAMを調べる手順
買う前に、まず手持ちのPCがどれくらい積んでいるかを見ておきましょう。Windowsなら追加のソフトは要りません。
キーボードのCtrl・Shift・Escを同時に押します。タスクバーを右クリックしたメニューからでも開けます。
左側の一覧にあるGPUをクリックします。複数ある場合は、型番にGeForceなどが入っている方を選びます。
ここに出る数字がVRAMの容量です。8.0GBなら8GB、16.0GBなら16GBと読み替えて、この記事の表と見比べてください。
8GB・12GB・16GB・24GB以上で何が変わるか
調べた容量を、動画生成AIをローカルで動かす条件と突き合わせて整理します。
- 6〜8GB:FramePackの公式記載(6GB)とComfyUI公式の5B版(8GB)が射程に入る入口
- 12GB:入口より余裕はあるが、公式が名前を挙げた16GBのラインには届かない
- 16GB:NVIDIA公式が制作手順の要件として挙げた容量。実用ラインの目安
- 24GB以上:Wan2.2公式が5B版の例として挙げた容量。節約設定の幅が広がる
この段階分けは、あくまで数字が公表されている範囲での目安です。「このボードなら何秒の映像が何分でできる」といった実測値は公表されていないため、ここでは触れません。



迷ったら16GB。公式が名前を挙げているラインなので、判断の根拠がはっきりしています。
まとめ|動画生成AIをローカルで動かす前に決めること
数字が入り乱れて見えますが、順番に追えば判断はそう難しくありません。
- まず手持ちのVRAM容量を「専用GPUメモリ」で確認する
- 6〜8GBならFramePackやWan2.2の5B版から試してみる
- 続ける気になったら16GB以上を目標に買い替えを考える
- RTX 5060 Tiは16GB版と8GB版があるので容量表記を見る
- 仕事で使うなら、着手前に公式のライセンス本文を読む
動画生成AIをローカルで動かす環境は、一度そろえば作れる本数に上限がありません。まずは手持ちのPCで試し、続けたくなってから投資するという順番が、いちばん無駄が出にくい進め方です。
- VRAMが足りないと動画生成AIはまったく動きませんか?
-
必ずしも止まるわけではありません。オフロードが働く構成なら、収まらない分をPC本体のメモリへ逃がして動き続けます。ただし処理は遅くなり、限界を超えると途中で止まります。
- ノートPCでも動画生成AIをローカルで動かせますか?
-
グラフィックボードを積んだモデルであれば可能性はあります。ただしノートPCは同じ型番名でもVRAM容量が違うことがあるため、購入前にスペック欄の容量表記を確認してください。
- グラフィックボードがないPCでも試せますか?
-
ローカルで動かすのは現実的ではありません。まずはブラウザで使うサービスで試し、続けたいと思ってからグラフィックボード搭載のPCを検討する方が、失敗が少なくて済みます。
- 動画生成AIで作った映像は仕事に使えますか?
-
モデルによります。Wan2.2とFramePackの公式表記はApache 2.0系、LTX-2.xは年間収益1,000万ドル未満なら無償で商用利用できる独自ライセンスです(2026年9月時点)。使う前に公式の原文を確認してください。









