AIと長く話していると、最初に伝えたはずの条件を無視した返事が返ってくることがありますよね。この「物忘れ」の正体がコンテキストウィンドウで、AIが一度に見ていられる範囲のことです。
長い資料を貼ったら途中だけ抜け落ちていた、会話が進むほど話がかみ合わなくなった。どれも同じ仕組みで説明がつきます。この記事では各社の公式ドキュメントで2026年8月18日時点の内容を確認し、言葉の意味から自分のパソコンで動かすときの目安までをまとめます。
コンテキストウィンドウとは、AIが一度に参照できる文章量の上限。会話が進むほど枠が埋まり、あふれた分は参照されなくなります。
- 単位はトークン。こちらが送る文とAIが返す文の合計で数える
- 2026年8月18日時点の上限はGPT-5.6系が1.05M、Claude Opus 5/Sonnet 5/Fable 5が1Mトークン(各社公式ドキュメント)
- 大きいほど賢いわけではない。公式も「長くなるほど正確さと想起が落ちる」と明記している
コンテキストウィンドウとは?AIが一度に見られる範囲のこと
コンテキストウィンドウとは、AIが返事を作るときに参照できる文章すべての範囲のことです。Anthropicの公式ドキュメントは、これを学習データとは別物で、モデルにとっての「working memory(作業記憶)」にあたるものだと説明しています(2026年8月18日確認)。
イメージとしては作業机の広さが近いです。机に広げられる書類の量には限りがあり、新しい書類を置き続ければ、いずれ古い書類は机からはみ出してしまいます。
見落としやすいのが、この枠にはAIがこれから出力する返事そのものも含まれる点です。公式の定義文にも「including the response itself」と明記されています。
数え方の単位はトークン(=AIが文章を区切って数えるときの単位)です。Googleの公式ドキュメントには「The context window defines the combined limit of input and output tokens.」とあり、入力と出力の合計で上限を数えることが分かります。
トークンの数え方や料金との結びつきはAIのトークンとは?料金が決まる仕組みで整理しています。ここでは「量の上限」に絞りますが、枠を消費するのはこちらが打ち込んだ文章だけではありません。
- これまでの会話:過去のやり取りは丸ごと積み上がる
- 貼り付けた資料:画像やPDFなどの添付物も対象
- 事前に与えた指示:システムプロンプトや役割設定
- AIの出力:返事の本文と、その裏で行う思考の分

「AIの記憶力」ではなく「今この瞬間に机へ広げられる量」と考えると、次の章の話がすっと入ってきます。
なぜ長い会話でAIが前の話を忘れるのか
よくある疑問:さっき伝えたばかりの条件なのに、どうしてAIは忘れてしまうの?
理由はシンプルで、会話は往復するたびに積み上がっていくからです。Anthropicの公式ドキュメントは「Progressive token accumulation」という言葉で、ユーザーの発言とAIの応答が枠の中に蓄積されていく様子を説明しています。
10往復目には1往復目からの全文が再び読み込まれるため、会話が長いほど枠は埋まり、いずれ限界に届きます。
チャットアプリは古いやり取りから静かに外れる
Anthropicの公式ドキュメントは脚注で、claude.aiのようなチャット画面は先入れ先出し(古いものから外していく)方式で枠を管理することもある、と明記しています。
この方式だと、警告が出ないまま古い発言が対象から外れます。AIは嘘をついているのではなく、外れた部分がそもそも見えていないという状態です。
APIは上限を超えるとエラーで止まる
一方、開発者向けのAPIでは挙動がはっきりしています。入力だけですでに上限を超えている場合、400エラー「prompt is too long」が返ると公式に記載されています。
また新しい世代のモデルでは、リクエスト自体は受け付けられ、生成の途中で上限に達すると「model_context_window_exceeded」という理由で停止する仕組みになっています。黙って忘れるのはアプリ側、はっきり止まるのがAPI側と覚えると分かりやすいです。
各チャットアプリのプラン別に「何往復まで覚えていられるか」は公式が公表していません。ネットで見かける「無料版は◯トークンまで」といった数字は、根拠が示されていなければ鵜呑みにしないでください。
画像やPDFを貼ると一気に枠が減る
資料を読ませた直後から会話が続かなくなるのも同じ理屈で、添付した画像やPDFも枠を消費します。Anthropicの公式ドキュメントでは、1回のリクエストに含められる画像やPDFのページ数は最大600(200kトークン枠のモデルでは100)と示されています。
主要AIのコンテキストウィンドウ比較【2026年8月18日時点】
ここからは実際の数字を見ていきます。以下は2026年8月18日に各社の公式ドキュメントで確認した値です。上限は改定されることがあるため、判断の前には必ず公式の最新情報を確認してください。
| 提供元 | モデル | コンテキストウィンドウ | 最大出力 |
|---|---|---|---|
| OpenAI | GPT-5.6 Sol/Terra/Luna | 1.05M | 128kトークン |
| Anthropic | Claude Fable 5/Opus 5/Sonnet 5 | 1Mトークン | 128kトークン |
| Anthropic | Claude Haiku 4.5 | 200kトークン | 64kトークン |
| Gemini(多くのモデル) | 100万トークン以上 | 公式ページに記載なし |
出典はOpenAIの開発者向けモデル一覧、Anthropicのモデル比較ページ、Googleのロングコンテキスト解説ページです(いずれも2026年8月18日確認)。Geminiはモデル別の数値が一覧に載っていないため、公式表記「1 million or more tokens」のまま記載しました。
では100万トークンとはどれくらいの分量なのでしょうか。Googleの公式ドキュメントは、その目安としてコード5万行分、平均的な長さの英語の小説8冊分、200本を超えるポッドキャストの書き起こしといった例を挙げています。
Anthropicは別の言い方をしていて、1Mトークンは約55万5千語/約250万文字、200kトークンは約15万語/約68万文字が目安だと補足しています。
枠が広いほど、長い資料をまとめて読ませたり、条件の多い依頼を一度に伝えたりできるようになります。Anthropicの公式ドキュメントも、枠が大きいモデルはより複雑で長い指示を扱えると説明しています。会話を仕切り直す回数が減るのも実用面での利点です。
数字の並べ方が提供元ごとに違う点には注意が必要です。文章をトークンに区切るルール自体が各社で異なるため(Googleのトークン解説)、同じ日本語の文章を送っても消費するトークン数は一致しません。表の数値は「おおよその器の大きさ」として比べるのが現実的です。



同じ提供元でも、軽量モデルは枠が小さいことが多いです。長い資料を扱う日はモデル選びから見直すと安定します。
大きければいいわけではない|context rotとコストの話
枠が大きいモデルを選べば万事解決、とはいきません。Anthropicの公式ドキュメントは「more context isn’t automatically better」とはっきり書いています。
続く一文では、トークン数が増えるにつれて正確さと想起が落ちていく現象を context rot(=文脈が長くなるほど内容を正しく拾えなくなる現象)という名前で紹介しています。
体感としては、長い会話の後半ほど回答が雑になったり、序盤に指定したルールが薄れたりする形で現れます。枠に入れば必ず正しく読まれる、という保証はありません。
もうひとつは費用と時間です。合計トークンが増えれば、そのまま処理量が増えます。料金の数え方についてはトークンと料金の解説記事にまとめてあります。
だからこそ公式も、空きがどれだけあるかと同じくらい「何を入れるかの選別」が重要だと述べています。枠が余っているからといって、関係のない資料まで貼り付けるのは得策ではありません。
自分のPCでAIを動かすときはVRAMで扱える長さが変わる
AIを自分のパソコンで動かす場合、扱えるコンテキストの長さはパソコンの構成に左右されます。
ローカルでAIを動かすOllamaの公式ドキュメントは、コンテキスト長を「モデルがメモリ上で参照できるトークン数の最大値」と定義し、VRAM(=グラフィックボードが搭載する専用メモリ)の容量に応じて既定値が変わると示しています。
| VRAM容量 | 既定のコンテキスト長 | できることの目安 |
|---|---|---|
| 24GiB未満 | 4kトークン | 短い質問と回答が中心 |
| 24〜48GiB | 32kトークン | ある程度まとまった文章を扱える |
| 48GiB以上 | 256kトークン | 長い資料や連続した作業にも対応 |
出典はOllamaの公式ドキュメント(2026年8月18日確認)です。同ページには「コンテキスト長を大きくすると、モデルの実行に必要なメモリが増える」とも書かれています。設定でいくらでも伸ばせるわけではない、ということですね。
もうひとつ押さえておきたい記述があります。Web検索やコード関連など長い文脈が必要な用途には、最低64,000トークンを設定すべきと推奨されている点です。
先ほどの表と並べると意味がはっきりします。VRAMが24GiB未満の環境では既定が4kトークンなので、こうした用途には桁がひとつ足りません。クラウドのAIと同じ感覚で長文を投げても、途中で足切りされてしまいます。
公式は性能面の注意として、モデルをCPU側へ逃がさないようにすることも挙げています。VRAMに収まりきらない分は動作が重くなりやすく、グラフィックボード選びがそのまま使い勝手に直結します。
どのモデルにどれくらいのVRAMが必要かはローカルLLMに必要なVRAMとGPUの選び方で、画像生成を含めた目安は画像生成AIに必要なPCスペックで詳しく扱っています。
\長い文脈まで扱うならVRAMに余裕を/
会話が途切れないための使い方のコツ
仕組みが分かれば、対処は難しくありません。日常の使い方で意識したいのは次の4点です。
- 話題が変わったら新しいチャットを立てる:前の話題を引きずらないぶん、枠を無駄に使わない
- 大事な前提は要点だけ再掲する:長い会話の後半で「条件をもう一度書くと」と添えるだけで安定しやすい
- 長い資料は分割して渡す:全部を一度に貼らず、必要な章だけ送る
- 不要になった添付は持ち越さない:役目を終えた資料は別のチャットへ切り離す
短く的確な指示は枠の節約にも直結します。書き方はプロンプトの書き方の基本も参考にしてみてください。
なお、上限を先延ばしにする仕組みも登場しています。Anthropicの公式ドキュメントによると、会話の前半をサーバー側で自動的に要約するcompactionという機能があり、上限を超えても会話を続けられるとのことです(2026年8月18日時点でベータ提供)。
こうした仕組みの有無や名称はサービスごとに異なります。使っているアプリに同種の機能があるかは、公式のヘルプで確認するのが確実です。
最後に、混同されやすい言葉を整理しておきます。
| 用語 | 指しているもの | 枠との関係 |
|---|---|---|
| コンテキストウィンドウ | 一度に参照できる範囲の上限 | この記事のテーマそのもの |
| トークン | 文章を数えるときの単位 | 枠の大きさを測るものさし |
| プロンプト | AIに渡す指示文 | 枠を消費する中身のひとつ |
| RAG | 必要な資料を検索して探し出し、その場でAIに渡す仕組み | 枠に入れる中身を絞り込むための工夫 |
| メモリ機能 | 会話をまたいで情報を保つ別の仕組み | 枠とは別。仕様はサービスごとに異なる |



「忘れられたら会話を仕切り直す」だけでも十分実用的です。枠を使い切る前に区切るのがいちばん手軽なコツですね。
まとめ
- コンテキストウィンドウはAIが一度に参照できる文章量の上限。返事そのものも枠に含まれる
- 会話は往復するたび積み上がり、チャットアプリでは古いやり取りから静かに外れることがある
- 2026年8月18日時点の上限はGPT-5.6系1.05M、Claude Opus 5/Sonnet 5/Fable 5が1Mトークン、Haiku 4.5が200kトークン
- 枠が大きいほど正確とは限らず、公式もcontext rotとして注意を促している
- 自分のPCで動かす場合はVRAMの容量が扱える長さを決める。長文用途なら余裕を持った構成を
AIが前の話を忘れるのは、性能が低いからでも気まぐれだからでもありません。机の広さという物理的な制約があるだけです。
クラウドのAIを使うなら「長くなったら区切る」、自分のPCで動かすなら「VRAMから逆算する」。各社の上限は今後も更新されるため、重要な判断の前に公式ドキュメントで最新の値を確認する習慣をつけておくと安心です。
- コンテキストウィンドウとトークンは何が違うの?
-
トークンは文章を数えるときの単位で、コンテキストウィンドウはその単位で測った「一度に参照できる量の上限」です。長さを測るものさしが前者、器の大きさが後者だと考えると分かりやすいです。
- 100万トークンはどれくらいの分量?
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Googleの公式ドキュメントはコード5万行分、平均的な長さの英語の小説8冊分といった例を挙げています。Anthropicは1Mトークンを約55万5千語/約250万文字と補足しており、提供元によって示し方が違います(2026年8月18日確認)。
- 上限に達したらどうなるの?
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チャット画面では古いやり取りから順に対象外になり、エラーが出ないまま「忘れた」ように見えることがあります。開発者向けのAPIでは入力が長すぎるとエラーで弾かれ、生成の途中で上限に達した場合はその時点で停止します。
- 自分のPCでAIを動かすときは何を見ればいい?
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まずグラフィックボードのVRAM容量です。Ollamaの公式ドキュメントでは24GiB未満で4kトークン、24〜48GiBで32kトークン、48GiB以上で256kトークンが既定値とされており、容量がそのまま扱える長さに直結します(2026年8月18日確認)。
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