「イラストを描くためのパソコン、どんなものを選べばいいんだろう?」
そんな疑問を持っている方は多いですよね。この記事では、イラスト制作に特化したノートパソコンの選び方を、パソコンに詳しくない方でも分かりやすく解説します。
必要なスペックや機能、周辺機器との相性まで、一つひとつ丁寧に説明していきますので、自分にぴったりの一台を見つけるためのヒントにしてください。
- イラストノートパソコンの特徴や通常モデルとの違い
- スペック選びの基準(CPU、メモリ、ディスプレイなど)
- 液晶タブやペンタブ内蔵型2in1のメリット
- 用途や予算に合わせたおすすめモデルの考え方
- 外部モニターや周辺機器を活用するコツ
イラスト用ノートパソコンとは?
イラストノートパソコンとは、お絵かきソフトを快適に使えるように設計された特別なノートパソコンのことです。一般的なノートパソコンとは異なる特徴があり、イラスト制作をスムーズに行うための機能が充実しています。
イラスト制作では、細かい線や色の表現が大切ですよね。そのため、イラスト用のノートパソコンは画面の発色や操作の反応速度などに優れているのが特徴です。また、大きなイラストファイルを扱っても動作が重くならないよう、性能面でも工夫されています。
普通のノートPCとイラスト用PCの違い
普通のノートパソコンとイラスト用パソコンは、主に以下の点で違いがあります。
- 画面の色表現:イラスト用は色の再現性が高く、実際の印刷物に近い色で描けます
- 処理能力:イラスト用は複雑な筆や効果を使っても動作がもたつきにくいです
- ペン入力への対応:イラスト用は専用ペンでの描き心地が良くなるよう調整されています
例えば、一般的なノートパソコンでは「描いた線がカクカク表示される」「色がくすんで見える」といった問題が起きやすいですが、イラスト用パソコンではそういった心配が少なくなります。
CLIP STUDIOやPhotoshopなどのソフトを使う場合は特に違いを実感できるでしょう。
イラスト制作に必要なノートPCのスペック
イラスト制作に適したパソコンを選ぶには、いくつかの重要な性能指標(スペック)をチェックする必要があります。ここでは、パソコンに詳しくない方でも分かるよう、それぞれの役割と選び方のポイントを説明します。
イラストを描く際は、複数の層(レイヤー)を重ねたり、細かいブラシ効果を使ったりすることが多いため、一般的な用途よりも高い性能が求められます。
特に大きなサイズのイラストや複雑な効果を使う場合は、余裕を持ったスペックを選ぶと安心です。
CPU・メモリ・ストレージ・GPUの選び方
CPU(頭脳)
CPUはパソコンの「頭脳」にあたる部品で、数字が大きいほど性能が高くなります。
- 初心者向け: Intel Core i5、AMD Ryzen 5クラス以上
- 本格的に使う方: Intel Core i7、AMD Ryzen 7クラス以上
「第12世代」など、新しい世代のCPUほど同じ番号でも性能が良くなります。イラスト制作では、線を描いた時の反応速度に影響するので、できるだけ新しい世代のものを選ぶと快適です。
メモリ(作業スペース)
メモリは作業中のデータを一時的に置いておく場所です。容量が大きいほど、同時に多くの作業ができます。
- 最低限: 8GB
- 推奨: 16GB以上
多くのレイヤーを使ったり、高解像度のイラストを描いたりする場合は、16GB以上あると安心です。メモリが少ないと「カクカク動く」「反応が遅い」といったストレスの原因になります。
ストレージ(保存庫)
データやソフトを保存する場所です。現在はHDDよりも高速なSSDが標準になっています。
- 容量: 最低でも256GB、できれば512GB以上
- 種類: SSDがおすすめ(NVMe SSDならさらに高速)
イラスト制作ソフトは比較的容量を使うので、余裕を持った容量があると安心です。「SSD」と表記があるものを選びましょう。
GPU(画像処理専用エンジン)
グラフィック処理を担当する部品です。内蔵タイプと独立タイプがあります。
- 2Dイラスト中心: 内蔵GPUでも十分
- 3D作品や動画も扱う: NVIDIA GeForceなどの独立GPUがおすすめ
独立GPUがあると、複雑な効果やフィルターの処理が速くなります。ただし、シンプルな2Dイラスト中心なら、最新のCPUに内蔵されているグラフィック機能でも十分使えます。
ディスプレイの色域と液晶パネルタイプ
イラストを描く上で、画面の「色の見え方」はとても重要です。以下のポイントをチェックしましょう:
色域(表現できる色の範囲)
- sRGBカバー率: 100%に近いほど色再現性が高い
- Adobe RGB対応: より広い色域で表現できる(印刷向け)
色域が広いほど、「鮮やかな赤」や「深い青」など、豊かな色表現が可能になります。
液晶パネルの種類
- IPS方式: 視野角が広く、色の変化が少ない(イラスト向き)
- VA方式: コントラストが高いが視野角による色変化あり
- TN方式: 応答速度は速いが視野角による色変化が大きい
イラスト制作には、色の再現性に優れた「IPS方式」のパネルがおすすめです。「IPSパネル採用」と表記があるものを選ぶと間違いありません。
解像度(きめ細かさ)
- フルHD(1920×1080): 標準的な解像度
- WQHD(2560×1440)やUHD(3840×2160): より細かい表示が可能
解像度が高いほど細かい作業がしやすくなりますが、その分電力消費も増えます。フルHDでも十分実用的ですが、細かい作業が多い方は高解像度モデルを検討するとよいでしょう。
ペンタブ・液晶タブを内蔵する2in1モデルの注目ポイント
画面に直接描けるタイプのノートパソコン(2in1モデル)は、イラスト制作にとても便利です。別途液晶タブレットを買わなくても、1台でお絵かき環境が整うのが魅力です。
2in1モデルには「画面が360度回転するタイプ」と「キーボードが取り外せるタイプ」の2種類があります。どちらも画面に直接ペンで描けるので、紙に描くような自然な描き心地を楽しめます。
スタイラスペンの互換性と筆圧感知
2in1モデルを選ぶ際は、付属のペンの性能をチェックすることが大切です。
- 筆圧レベル: 数値が大きいほど(例:4,096段階)線の強弱表現が細かくできる
- ペンの互換性: 「Wacom AES」や「Microsoft Pen Protocol」など、使えるペンの規格
- 傾き検知: ペンを傾けた時の表現ができるかどうか
筆圧レベルは、最低でも1,024段階、できれば4,096段階以上あると線の表現がより自然になります。また、有名メーカーのペン規格に対応していると、好みのペンを選べる自由度が広がります。
具体例を挙げると、「Surface Proシリーズ」や「HPのSpectrex360」などが、イラスト制作に適した2in1モデルとして人気があります。
軽量・薄型ノートPCでのイラスト環境
2in1タイプは持ち運びやすさも大きな魅力です。
- 重量: 1.5kg以下だと持ち運びやすい
- バッテリー駆動時間: 8時間以上あると外出先でも安心
- タブレットモード: キーボードを折りたたんだり取り外せたりする機構
カフェや旅行先でイラストを描きたい方には、軽くて薄い2in1モデルがおすすめです。ただし、薄型になるほど放熱性能や拡張性が犠牲になることがあるので、主に自宅で使う場合は標準的なノートPCに外付け液晶タブを組み合わせる方法も検討してみてください。
用途別おすすめイラストノートパソコン
イラスト制作といっても、趣味で楽しむ方から仕事として使う方まで、求める性能は人それぞれです。ここでは、用途や予算に合わせたおすすめのタイプを紹介します。
あなたのイラスト制作スタイルに合わせて、必要十分な性能のパソコンを選ぶことが大切です。必要以上に高性能なモデルを選ぶと予算オーバーになりますし、逆に性能が足りないと描いていてストレスを感じることになります。
初心者向けのコスパ重視モデル
イラストを始めたばかりの方や、趣味として楽しみたい方におすすめの条件です。
- 予算目安: 10~15万円程度
- おすすめスペック:
- CPU: Core i5、Ryzen 5クラス
- メモリ: 8GB~16GB
- ストレージ: 256GB以上のSSD
- ディスプレイ: フルHD(1920×1080)・IPSパネル
このクラスのパソコンでも、CLIP STUDIOやMediBang Paintなどのイラストソフトは十分に動作します。大きなキャンバスサイズや複雑な効果を多用しなければ、快適に描くことができるでしょう。
将来的にステップアップしたい方は、「メモリ増設ができるモデル」を選ぶと、後から性能アップできて便利です。
本格派向け高性能モデル
仕事でイラストを描く方や、複雑な作品を制作したい方におすすめの条件です。
- 予算目安: 15~25万円程度
- おすすめスペック:
- CPU: Core i7以上、Ryzen 7以上
- メモリ: 16GB~32GB
- ストレージ: 512GB以上のSSD
- グラフィック: NVIDIA GeForceなどの独立GPU搭載
- ディスプレイ: フルHD以上・IPSパネル・広色域対応
このクラスになると、大きなサイズのイラストや複雑なブラシエフェクトもスムーズに扱えます。また、Photoshopでの高度な編集作業や、IllustratorなどAdobe製品も快適に動作するでしょう。
「クリエイター向け」や「クリエイティブPC」という名称で販売されているモデルは、このクラスに該当することが多いです。
イラストノートパソコンと周辺機器の相性
ノートパソコン単体でもイラスト制作はできますが、周辺機器を追加すると作業効率がグッと上がります。ここでは、イラスト制作に役立つ周辺機器とその選び方について説明します。
イラスト制作は長時間同じ姿勢で作業することが多いため、体への負担を減らす工夫も大切です。画面を見やすい位置に調整したり、手首の負担を減らしたりする周辺機器を活用しましょう。
ディスプレイ拡張で作業効率アップ
外部モニターを追加すると、作業スペースが広がって効率が上がります。
- 接続方法: HDMI端子やUSB-C端子でモニターと接続(端子の形状を事前確認)
- モニターの種類: IPSパネル・フルHD以上・sRGB100%対応がおすすめ
- サイズ: 21~24インチが使いやすい(大きすぎると首の動きが増える)
外部モニターがあると、片方の画面でイラストを描きながら、もう片方の画面で資料を見たり、ツールパレットを配置したりできます。「描く」と「操作する」を分けられるので、作業がスムーズになります。
また、ノートPCをスタンドで持ち上げて目線の高さに調整すると、姿勢が良くなって長時間の作業も楽になります。
接続前のチェックポイント
- ノートPCの映像出力端子の種類(HDMI、DisplayPort、USB-Cなど)
- 接続するモニターの入力端子の種類
- 必要に応じて変換アダプターを用意する
作業環境を快適にする周辺機器
イラスト制作を快適にする周辺機器をいくつか紹介します。
- 冷却パッド: ノートPCの熱対策に。長時間使用での性能低下を防ぐ
- ノートPCスタンド: 画面の高さと角度を調整して姿勢を改善
- 外付けキーボード: ショートカットキーを使いやすく配置できる
- USBハブ: 複数の周辺機器を同時に接続するために便利
これらは必須ではありませんが、あると作業がより快適になります。特に長時間イラストを描く方は、姿勢や手首の負担を減らす工夫をすることで、体への負担を軽減できます。
よくある質問(Q&A)
イラスト用ノートパソコン選びでよく聞かれる質問に答えます。疑問や不安を解消して、自分に合ったパソコンを見つける参考にしてください。
- イラスト制作用なら最低限どのCPUランクが必要ですか?
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2Dイラストを基本的な機能で描く程度なら、Intel Core i5やAMD Ryzen 5でも十分対応できます。ただし、複雑なブラシや効果を使ったり、大きなサイズのイラストを描いたりする場合は、Core i7やRyzen 7以上がおすすめです。「世代」も重要で、例えばCore i5でも第10世代より第12世代の方が性能が良くなります。
- 色のズレを抑えるために気を付けるポイントは?
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まず、色再現性の高いIPSパネルのディスプレイを選びましょう。また、sRGBカバー率が100%に近いモデルが理想的です。実際に使う際は、部屋の明るさを一定に保ち、画面の明るさ設定も適切に調整することが大切です。また、ディスプレイの色調整(キャリブレーション)を定期的に行うと、より正確な色で描けるようになります。
- 2in1タイプが液晶タブの代わりになるの?
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はい、最近の2in1ノートPCは液晶タブの代わりとして十分使えます。ただし、筆圧感知のレベル(1,024段階や4,096段階など)や描画精度は機種によって差があります。例えば、Microsoft SurfaceシリーズやHP Spectre x360、Lenovo Yogaシリーズなどは、イラスト制作に適した2in1モデルとして人気があります。特に持ち運びが多い方には、オールインワンの2in1が便利です。
- CLIP STUDIOやPhotoshopなど重いソフトはストレージ容量どれくらい必要?
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ソフト自体の容量としては、CLIP STUDIOで約4GB、Photoshopも含めたCreative Cloudの主要アプリだと20~30GB程度必要です。さらに作成するイラストのデータも保存するとなると、最低でも256GBのSSDがあると安心です。さらに余裕を持つなら512GB以上がおすすめです。容量が心配な場合は、外付けSSDやクラウドストレージも併用すると良いでしょう。
- イラスト用パソコンにはGPU(グラボ)は必須?
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イラスト目的でパソコンを購入する場合、可能であればグラフィックボードを搭載したモデルを選択すると快適に作業が行えます。
しかし、必ずしもグラフィックボードは必要ではなく、高性能CPUに内蔵されているGPUでも趣味程度にイラストを描く人なら何の問題はありません。
ただ、高スペックほど快適に作業を行えるのは間違いないため、最終的には予算との相談になります。
この記事のまとめ
イラスト用ノートパソコンを選ぶ際は、自分の描きたいイラストのスタイルや予算に合わせて、必要なスペックを見極めることが大切です。
特に色の表現にこだわるなら画面の品質、スムーズな動作を重視するならCPUとメモリ、細かい線の表現にこだわるならペン入力の性能をしっかりチェックしましょう。
初心者の方は、まずは手頃な価格帯のモデルから始めて、必要に応じて周辺機器を追加していくのがおすすめです。
最初から高価なモデルを選ぶよりも、実際に使ってみて自分に必要な機能が分かってから、次のステップアップを考えるとより失敗が少なくなります。
- イラスト用ノートPCは色再現性とメモリ容量を重視しましょう
- 2in1タイプは携帯性と直感的な描き心地が魅力です
- 外部モニターや冷却パッドなど周辺機器で作業効率がアップします
- ソフトの要件と予算に合わせてスペックを選ぶと失敗しにくいです
- 最初は必要最低限の性能で始め、足りない部分を後から補う方法も検討しましょう
この記事を参考に、あなたにぴったりのイラストノートパソコンを見つけて、楽しいお絵かきライフを始めてくださいね!